薬事ニュース社
オピニオン

>>>ルーキー、ベテラン、そして主力<<<
 プロ野球観戦の愉しみのひとつはルーキーのフレッシュな活躍だろう。今年、大谷翔平がメジャーへと移籍してしまったのと入れ替わるようにして、清宮幸太郎が颯爽とデビューした。交流戦前に二軍落ちしたのは残念だが、打席での風格は新人離れしていて頼もしい。来年は恐らく、リーグでも指折りの強打者に成長しているはず、と個人的には確信している。
 一方で、限界説も囁かれていた松坂大輔の見事な復活劇をはじめとするベテランの躍動する姿もまた、痛快だ。ルーキーが清新な風を吹き込み、ベテランが経験に裏付けられたいぶし銀の働きで存在感を示す。チームの勝利には、そのいずれもが欠かせない。
 製薬業界における「ルーキー」は、言わずと知れた「新薬」。その存在感はプロ野球と同等、いや、それ以上で、ルーキー(新薬)の活躍(売上)が、チーム(企業)の成績(業績)のカギを握る。ところが、チーム=企業の命綱ともいえる新薬への風当たりが年々、強まっている。要因は価格の高騰。プロ野球でもかつて、契約金の高騰が問題視されたが、画期的だが高額な新薬が続々と登場したことで社会的な問題にまで発展した。
 他方、製薬業界では「ベテラン」(長期収載品)も肩身が狭い。「特許が切れたら即、後発品に市場を譲れ」とばかりに、次々と価格引き下げルールが導入され、18年度薬価制度改革では、とうとう将来的に後発品と同水準にまで価格を引き下げるG1ルールが新設された。
 さらに言えば、主軸を担うはずの「中堅主力」(特許期間中の新薬)さえもが、18年度制度改革では、「新薬創出加算」への「企業要件」「品目要件」の導入で散々な目に遭い、政府挙げての使用促進の後押しを受けているはずの後発品も、初収載係数の引き下げや価格帯集約などの影響で、見通し不透明なのが実状。
 「ルーキー」も「ベテラン」も冷遇され、屋台骨となるはずの「主力」さえもが査定(改革)により年俸(薬価)ダウンの憂き目を見る。さて、こんなチームが、勝利の栄光に浴する日が、果たして来るのだろうか。
(2018年7月20日掲載)