薬事ニュース社
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>>>10年振りの政権交代は業界にどのような影響を与えるか<<<
 決選投票の結果が会場内に読み上げられると、「おおっ」と歓声が響いた。日本薬剤師会の会長候補者選挙が3月10日の臨時総会で行われ、岩月進氏が会長候補者に選出された。会長候補者として名前を呼ばれ、マイクの前に立った岩月氏は顔が硬直し、最初の声を出すまでに数秒かかった。その重責を改めてかみ締めるような佇まいだったのが印象に残った。会長候補者選挙の下馬評は混戦だった。岩月氏自身も選挙後の記者会見で「60・60・30くらいになるのではないか」と予測しており、決選投票まで見込んだ選挙戦を行ってきたことを明らかにした。とは言え、最初の投票結果で岩月氏は67票を獲得、安部氏52票、田尻氏30票であり、岩月氏陣営の読み通りの展開であったことも事実であり、決選投票を前に中部ブロックからは「勝って兜の緒を締めよ」という、勝利宣言も飛び出していた。決選投票では67票に12票を上積みした79票を獲得し、混戦を制した。さて、変化を期待されての政権運営は、ある程度大胆な改革が実行しやすい環境下にもある。組織の根幹とも言える会員数に関しては、10万人から横ばい状態が継続しており、山本信夫会長の政権下で有効な増強策を打ち出すことができなかった。会員数が10万人で、薬局に勤務する薬剤師数が約28万人であることを考えると、組織率が3分の1程度では、心もとない。日薬・都道府県薬剤師会・支部薬剤師会の3層構造はどうあるべきか。時代に即した変化があっても不思議はないだろう。その一方で、懸念点もある。行政関係者からは「会長・副会長の陣容は東日本の割合が低く、これまでにないほど西高東低。審議会等に参加する執行部も変わるだろうし、円滑な引継ぎが行われるか心配している」との声や、他団体からは「(新執行部は)中央での経験値はどうなのか。次回改定で、やり玉にあがるのでは」との指摘も耳にする。期待と不安が入り混じる中、その一挙手一投足に注目が集まる。岩月氏も「1期目というのは、かなり大変であることは認識している。新しいことがどこまでできるか、会員に示しながら取りかかりたい」と語り、新執行部への期待を追い風にする意欲を示している。
(2024年3月29日掲載)