薬事ニュース社
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>>>糖尿病治療はメーカー主導?<<<
 昨年9月の欧州糖尿病学会。経口糖尿病薬として初めて2型糖尿病患者における心血管イベント発症を抑制したとされる「アクトス」の臨床試験「PROactive」が発表された。「(試験結果を受け)、特に循環器の医師が大変関心を持っている」――。専門医からはこんな声も聞こえてくる。05年度「アクトス」の売上高は前期比約57%増の242億円。確かに数字も伸びている。
 その一方で、試験結果に疑問を投げかける医師もいる。先日開催された日本糖尿病学会でのこと。ある大学病院の医師は、「アクトス」に関して心血管イベント発症を抑制するか否かについてはまだまだ疑問があると指摘する。「PROactive」が報告された同じランセット誌。そこには、「アクトス投与で、心血管疾患合併のハイリスク2型糖尿病患者での総死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中の頻度が約16%減少した。しかしその一方で、心不全とは断定できない原因による浮腫は4倍、心不全は2倍以上の頻度で増加し、心血管イベント抑制の効果を上回った」――などとする論文が掲載されたと紹介する。
 「科学的根拠に基づく診療」ということで「EBM」が盛んに叫ばれている昨今。臨床試験の結果は確かにひとつ。ただ、それをどう評価、解釈するかは必ずしもひとつではない。「糖尿病の治療はメーカー主導だよね」――。ある医師が言った言葉が印象に残る。
(2006年6月16日掲載)