薬事ニュース社
オピニオン

>>>夏の終わりに「死後」の話<<<
 お盆を過ぎた頃はいわゆる「怪談」が風物詩でもあるが、霊魂とは何なのか、ヒトは死んだ後はどうなってしまうのか、ふと考えてしまう時がある。個人的には心霊体験もなければ、霊感もない。ところで毎日眠りについて眼が覚めた後、睡眠状態にあった5~6時間の記憶はすっぽり抜けていることに気が付く。命が尽きた後は、眠りに堕ちている時と同様に〝無〟なのかと思いきや、カナダの心理学者ボーリガード博士著の「Brain Wars」には、脳動脈瘤の手術中に心停止となったケース、急性のアレルギーショックでDOA(病院到着時死亡)と診断されたケース等々まさに〝死〟に至りつつある人々(その後息を吹き返す)の体験談が記されており、状況は異なりながらも――横たわっている自分を上から見下ろしている、トンネルを通り抜ける、大きな光に包まれ、経験したことのない幸福感を得る――など多くのケースで共通の現象が起きているようだ。これらは超常現象というよりも、もしかしたら生命の危機的状態にある時に脳が経験する現象なのかもしれない。また養老孟司氏の著書には脳卒中で臨死状態に陥った女性脳神経解剖学者の体験が記されているが、そのとき脳の専門家である彼女は、自分と世界との境界が消失し、世界と一体となり、肉体を持っていた時には味わえない至福の状態になったそうだ。いずれのケースでも言われようのない幸福感を得た後、現世に蘇生した時には閉じ込められたような苦しみを体験するそうで、やはり仏教で言う「この世は苦」ということか。いずれにせよ、いつかは誰でも「あの世」を体験できるわけで、本当は「生きているってどういう意味があるの?」なんて大仰なことは考え込まないで、日々粛々と生活を続けていくのが健全な生き方なのだろう。
(2014年8月29日掲載)