薬事ニュース社
オピニオン

>>>「無料」の威力<<<

 年末はバーゲンセールの季節。消費活動は盛んになる。いるモノも、いらないモノも買ってしまうのがこの季節だ。オンラインストアのAMAZONでは、商品の合計額が一定額以上にならないと配送料金が無料にはならないのだが、書籍や日用品を購入する際、合計額が所定の金額に達しない場合は、本当に欲しいモノではないが、〝あればいいレベルのモノ〟をも、ついつい追加購入してしまう。もし毎回そのような購買パターンを採っているなら、累積的・総合的に考えれば結構なムダ買いをしているはずなのだが、「配送料金無料」を得たというささやかな勝ち星の前に、冷静な判断力は失せてしまうようだ。実際、少し前の各国のAMAZON売上を見ると、配送料金無料制度を採用していなかったフランス以外、いずれの国でも無料制度導入により大幅に売上が伸びていたとのこと(その後フランスも無料制度導入で売上は伸長)。つまり、世界各地で大々的に「配送料金無料」ステータス欲しさのムダ買いが横行していたことになる。
 「タダ」というのは実に魅惑的で、人の計算力をも狂わせてしまう。例えばタダで1000円分のギフト券がもらえるのと、800円払えば2000円分のギフト券がもらえるのとどちらを選ぶか? おそらくだが、タダの方を選ぶ人が割と多いのではないか。実際は800円払ったほうが差し引き200円得なのだが……。斯様に「無料」というのは思う以上に人を動かし威力を発揮するものであり、各種マーケティングにも上手く利用されているのだ。ということであれば、自然環境・社会保障・健康医療など様々な政策立案に携わる方々には、この影響力を大いに利用していただきたい。大きく世の仕組みを変えたいときには、社会心理学を応用しつつ「無料」のパワーをあらゆる場面で導入してはどうか? 

(2013年12月13日掲載)