薬事ニュース社
オピニオン

>>>「ついで」の効果<<<
 近所のジムで週に1~2回、運動している。最初は自転車のマシンで汗を流すだけのつもりだったが、行ったついでに筋トレマシンも使ってみるようになった。先日、約1年ぶりに会った友人に腕が細くなったと言われた。「ついで」のつもりで思わぬ効果を得られることがある。
 先月開催された東洋医学会で、がん緩和医療における全人的アプローチをテーマにしたシンポジウムがあった。金沢医科大学病院麻酔科・集学的がん治療センターの小川真生氏は漢方医学的診療について、心のつらさと体のつらさを分けない診療が確立していることから緩和ケアに有用と強調した。ただし緩和ケアチーム介入時から患者が漢方を希望していることはまずないという。患者と別の問題を相談しているついでに「実はこんなことで困っているんですが何とかなりませんか」と言われた場合や、主治医・病棟看護師との会話の中でついでに「その問題は漢方薬で改善する」などと話すことから漢方治療につながることが多いそうだ。
 小川氏の述べる「ついで」は、実は「ついでではない」ように思える。相手に安心感を与える良好なコミュニケーションの重要性を改めて教わったと思っている。
(2015年7月10日掲載)