薬事ニュース社
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>>>「昔の薬局」に戻るには<<<
 「失敗は許されない」――。日本薬剤師会の石井甲一副会長は10月16日の記者会見で、厚生労働省の予算事業である「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」に対してこのように語る。日薬執行部が医薬分業バッシングへの対応策として、最も重視している事業だけに、どの日薬会員からも同様の強い意気込みが窺える。
 健康情報拠点事業は、在宅医療やセルフメディケーション支援などで先駆的な取組みを行っている薬局に対し、国が助成するモデル事業。その主眼は、地域住民が健康相談で第一に訪れる、いわゆる「ファーストアクセス」機能を薬局に持たせることにある。院外処方せん発行率の伸びに伴い、調剤業務に偏向している多くの薬局を、OTC薬や衛生雑貨品などを豊富に取り揃えた「昔の薬局」に戻そうという動きだ。
 この「ファーストアクセス」機能の構築を巡っては、日本医師会側の反発という問題も生じているが、それ以上に重要なことは現場の薬局・薬剤師の意識改革だろう。医薬分業自体、国による「政策誘導」として進められてきたとの見方が強い。「政策誘導」としての分業を進めてきた結果、OTC薬を手放した薬局が「昔の薬局」に戻るために国の助成事業に頼るだけでは、薬局・薬剤師の評価を確立するのは難しい。助成のある無しに関わらず、現場の薬局・薬剤師の自発的な努力に期待したい。
(2014年10月24日掲載)