薬事ニュース社
オピニオン

>>>言葉の独り歩きを煽る一部のメディア<<<
 「薬局を経営する立場として危うさを感じた」。去る9月29日のTwitter等のトレンドワード(TwitterやFacebookで頻繁に登場する言葉)に「医療用大麻解禁」という文字が躍った。唐突にも思えるが、その背景にあるのは同日開催された厚科審・医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会が取りまとめを大筋で了承し、この中で大麻成分であるカンナビジオール(CBD)由来の医薬品を製造することなどを認めたことにある。前出のコメントは薬局を経営する薬剤師で、「医療用麻薬と同じで、医薬品としての正しい部分が浸透するより先に、誤認に近い言葉が先行して、実際にその医薬品が必要な方へ届きにくい状況が作られる」と警鐘を鳴らす。医療用という言葉が先についているとは言え、大麻解禁という一般国民が困惑するようなフレーズには「メディアの配慮が必要ではないか」と苦言を呈する。実際のところ、親部会である医薬品医療機器制度部会で了承され、その後国会で審議、法案の可決・成立を経て大麻由来医薬品が上市されるため、国民の手元に届くのは数年先と言えるだろう。さらに、難治性のてんかんへの治療で大麻由来医薬品の有用性が検証されているところであり、日本人への治験なども含め、まだ見通しが不透明な部分もある。その一方、国立がん研究センターによると2人に1人はがんに罹患すると言われるなか、日本人における医療用麻薬の使用は世界においても突出して低い。その背景にあるのは、麻薬という言葉の持つネガティブさだという。大麻由来医薬品を医療用麻薬の二の舞いとならない適切な啓発こそが、メディアの役割ではないだろうか。
(2022年11月4日掲載)