薬事ニュース社
オピニオン

>>>EBMではなくMRBM<<<
 「医師の処方に影響を与える情報伝達手段」について、ある医療情報提供会社が医師を対象に調査した所、1位は「優秀なMRによる情報提供」。2位が「講演会」で、3位は「インターネット」。続いて、4位「通常レベルのMRによる情報提供」、5位「レベルの低いMR」、6位「雑誌広告」という順位になったそうだ。「レベルの低いMR」と評されているのは何とも皮肉なことだが、その一方で、そういったMRでも雑誌広告に比べて医師の処方に与える影響は大きいということが窺える。
 「(薬が)いいから使っているのではなく、MRが言うから使っている」――。こう話すのは、ある大学病院の薬剤部長。“いい薬”、つまり切れ味鋭い薬に副作用はつきもの。ただ日本では、そういった“いい薬”でも、いったん安全性情報などが出てしまうと、売上高はがくっと落ちてしまうという。それはなぜか。「イエロー1枚で、怖くてその薬を使えない医師が多いから」。薬剤部長はこう話す。
 が、例外もある。武田の糖尿病治療薬「アクトス」がそれだ。「アクトス」は00年に緊急安全性情報が出され、注意喚起が図られた薬剤。ただ、情報が出たあとも、売上げは落ちなかったという。薬剤部長は、「武田さんは糖尿病専門医だけに売ったから」と説明する。
 EBMではなくMRBMになっている――。薬剤部長は現状をこう指摘する。「レベルの低いMR」と評している医師自体の薬の使い方が問われている。これまた何とも皮肉なことである。
(2006年12月1日掲載)