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>>>経口中絶薬が承認申請<<<
 英ラインファーマは昨年12月、経口中絶薬「ミフェプリストン」「ミソプロストール」を承認申請した。承認されれば国内で初めての経口中絶薬となる。世界保健機関(WHO)は、ガイドラインの中で飲み薬を「安全で効果的な中絶法」として推奨しており、80以上の国・地域で承認されている。
 日本で中絶手術は金属製の器具で子宮内の内容物をかき出す「そうは法」が一般的で、この方法は心身ともに負担が大きいとの声が多い。また手術は保険適用されず、10万~20万円の自己負担がある。
 こうした状況下で経口中絶薬の実用化は手術費用に比べ安価であることに加え、体への負担も軽いということで、心身の負担軽減につながる可能性がある。国際的な平均価格は約700円台とされている。
 一方で価格設定や処方方法が大きな焦点となる。たとえ承認されても、医師の診察や入院が必須で、中絶手術並みに費用がかかる可能性がある。日本産婦人科医会が慎重な姿勢を示しているためで、処方は当面入院が可能な医療機関で、中絶を行う資格のある医師だけが行うべきだとの考えを示している。また薬の処方にかかる費用については手術と同程度が望ましいとした。
 他の先進国と比べ日本では、中絶方法の選択肢が少ないとの指摘は多くあった。経口中絶薬が承認申請されたことで、こうした状況や社会的な価値観がどう変化していくか注目したい。
(2022年1月7日掲載)