薬事ニュース社
オピニオン

>>>米国医療の実態<<<
 ドキュメンタリー映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」と世界中で立て続けにヒットを飛ばしたマイケル・ムーア監督が、次回作に取り組む題材は米国の医療保険制度、とりわけ「無保険者」の実態に迫るという記事を読んだ。02年米国国勢調査によると、全米人口の15%を占める約4300万人、実に国民の6人に1人が無保険者だという。その数の多さもさることながら、その対象者に自営業者、サラリーマンなど中産階級の人々がいること、近年ではその人々の割合が拡大しているというから驚きだ
  なぜサラリーマンが無保険者となるのか。それは米国の医療保険制度であるマネジド・ケア(医療管理)に根本原因がある。マネジド・ケアにも様々なスタイルがあるが、最も典型的なのがHMOという民間の保険会社を軸とする仕組み。企業はHMOと契約して医療保険を購入し従業員に提供するのだが、その契約料金の上昇とともに、IT景気が崩れて行き詰まりの状態にある米国の経済社会では医療保険を購入できるほど資金力のない中小企業が増えているのだという。
 米国の健康保険料は過去10年間で75%も上昇し、ひと家族が年間支払う健康保険費用は平均で9500ドル(約106万円)にものぼることを米国の健康調査機関が公表していた。何度か皆保険のお世話になったことのあるDCに住む友人がしみじみと「アメリカにいると、医療は“特権”なんだなと感じる」という言葉を思い出した。

(2004年10月8日掲載)