薬事ニュース社
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>>>奇妙な安心感<<<
 野田内閣が発足して約1カ月近くが経過した。一部報道では、長妻昭前厚生労働相が主催する党の会合で野田首相は、「次期改定で基本的に引下げは行わない」と言明したと伝えられており、医療界のなかにも安堵の表情を浮かべる人もいるようだ。そうしたなかで、中央社会保険医療協議会の委員である京都府医師会の安達秀樹副会長は、9月23日に大阪市内で開かれたシンポジウムで、「医療界には奇妙な安心感があるが、私はそんなことはありえないと思う」とクギを刺した。
 野田首相は財務副大臣就任時、10年度改定を巡る予算編成の過程で大幅なマイナス改定を要求した経緯がある。こうした背景を踏まえて、安達副会長は「その後の基本的政策をみても、野田大臣は財務省公認候補のようなもの。引下げは基本的にないと言っているが、自民党の小泉政権下で実施された社会保障費2200億円の削減を行わないだけだ」と分析する。
 財務省側は10年度改定において、診療報酬の底上げではなく、配分の見直しが必要と主張してきたが、日本医師会はこうした財務省の主張と対峙してきた。日医の会員である安達副会長もシンポジウムで「厳しい道筋がこれからあることを覚悟しなければならない」と語る。特に前回改定時において、財政中立の観点から実施された「後発医薬品のある先発医薬品の追加引き下げ」に関しては、捻出される財源の行方を注視する姿勢をみせている。
(2011年9月30日掲載)