薬事ニュース社
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>>>正しい救命行為法の普及を望む<<<
 事故や病気などで倒れた人(傷病者)に対する最初の救命行為を指す1次救命。一般的には、救急車を呼んだ後、傷病者の意識・呼吸の有無を確認し、無ければ心臓マッサージおよび人工呼吸、最近ではAEDを用いて心肺蘇生を行う。2006年に起こった心原性の心肺停止症例数は1万8320人で一般市民による1次救命を受けた症例は7917件。1カ月後の生存率は1次救命有りで10.1%、無しでは7.2%と差が見られた。救急車が通報から現場に到着するまでは平均6分30秒と言われているが、人間は心停止後4分以内に心配蘇生が行われなければ低酸素状態により回復の機会が著しく減少するため、発見者はすぐに1次救命を施したほうが良い。
 しかし、正しい救命行為を行わないと新たな事故を起こす可能性もあり、注意が必要だ。心臓マッサージは胸の真中を圧迫するが、胸骨の下側にある剣状突起を誤って圧迫すると、折れて内臓を損傷する。また、人工呼吸は、吹き込む息が多すぎ、または勢いよく吹き込みすぎると人工呼吸の効果を減少させることに加え、胃の内容物を口腔内に逆流させて気道閉塞や肺炎を引き起こす危険がある。安全性を優先してAEDのみの1次救命でよいと考える医師もいるが、AEDの普及が進んでいるとはいえ、心停止後4分以内にAEDを取ってきて心肺蘇生を施すことは難しい。
 高齢化および救急車不足が叫ばれる昨今、一般市民が傷病者に対し1次救命を施す機会が増加すると予想される。日本赤十字社などで随時行われている一次救命講習会を受けておくことも、今後は必要になってくるだろう。
(2008年10月10日掲載)