薬事ニュース社
オピニオン

>>>声をあげること<<<
 遺伝性血管性浮腫(HAE)という疾患をご存知だろうか。私自身は、このHAEに関するセミナーに参加するまで全く知らなかった。HAEは、C1インヒビターの遺伝子異常によって、まぶたやくちびる、顔、手足、腸など身体のいたるところに“腫れ”が出来ては消える疾患なのだが、咽喉部にできた場合、この“腫れ”によって気道がふさがれてしまい、最悪の場合は死に至る。患者数ははっきりしていないが、5万人に1人の有病率と言われている。医師の認知率が低いことや、症状が1~3日で消えてしまうこともあるため中々診断がつかず、発症から十数年経ってからようやく適切な対応がとられることも珍しくない疾患だ。
 さて、このHAEの患者会である「NPO法人HAEJ」が2014年4月に設立され、ようやく2年を迎えた。かつて、国によるHAEの対策を求めて厚生労働省に要望行動をとった医師の話によると、「患者会も無いような疾患の対応などはできぬ」「その道の権威がいない」などの理由から、まったく相手にされなかったそうだ。診断がつきにくい、あるいは希少な疾患対策の問題がここに凝縮されているように思える。近年ではSNSの発展により、一般の人々が情報を発信することが容易になった。対策が必要な患者やその家族は、ただ支援を待つのではなく声をあげることが必要だろう。行政、医療関係者、メディアは、HAEのようにまだ世間に気付かれていない疾患があることを忘れてはならない。
(2016年6月3日掲載)