薬事ニュース社
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>>>タバコ、アニメ映画、病院<<<
 宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」が賛否両論を呼んでいるらしい。映画そのものの出来についてではない。喫煙シーンがやたらと多いことに対して、日本禁煙学会がクレームをつけたのである。もっとも、監督がテレビのドキュメンタリー番組にくわえ煙草で平然と現れるほどだから、世間の「喫煙=悪」の風潮にモノ申したかったのかも知れないが、いずれにしろアニメ映画にあまり目くじら立てても仕方がない。
 ところで、「仕方ない」では片付けられないのが医療機関における喫煙の問題。ケアネットが医師会員1000名を対象に行ったアンケートによると、病院機能評価の項目に「全館禁煙」の項目が含まれるせいもあり、院内ではなく院外、あるいは病院周辺の喫煙状況に問題がみられるケースが増えているらしい。いわく、「敷地の一歩外の歩道上で入院患者が集団で喫煙し、かえって見苦しい」「施設内全面禁煙なのに医療従事者が屋外の建物の陰で喫煙しているところが病棟から丸見え」「敷地内で喫煙できなくなった職員や患者が正門で喫煙。敷地外なので積極的に注意できない状況で、病院のイメージが悪化しないか心配」「患者さんから『煙草臭い人がいてリハビリを受けたくない』と苦情あり」などなど。煙草の弊害をいやというほど見せつけられているはずの医療関係者(と患者)ですらこの体たらくなのだから、いくらお上が無理矢理禁煙を押し付けようとしてもなかなか思うに任せないのもむべなるかな。
 と、まあ、自身が3年半前に禁煙したものだから他人事のように書いてますが、個人的な考えを言えば、過度に禁煙至上主義的な風潮には首を傾げざるを得ないものの、病院となると話は別。病気を治すために行った病院で、あらゆる疾患の最大の原因とされる煙草にさらされたのでは話にならない。というわけで、医療費抑制には薬価よりも何よりも、真っ先に煙草に手を着けなければならないはずなのに、やっぱり財務省は頑として応じないんだろうなあ。
(2013年9月6日掲載)