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>>>アルツハイマー病治療薬開発の節目<<<
 今年1月6日、アルツハイマー型認知症治療薬として米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得したエーザイとバイオジェンのヒト化IgG1モノクローナル抗体「レケンビ」(一般名=レカネマブ)。同剤は国内でも早期ADに係る適応での製造販売承認申請に対し、厚生労働省より優先審査品目指定を受けた。これによって、早ければ今年中にも国内初のADに対する疾患修飾薬の承認が期待できる。
 一方で、「レカネマブ」に追随するAD治療薬の開発も節目を迎えている。イーライリリーの「ドナネマブ」は2021年10月よりAD治療薬を対象としたFDAへの迅速承認を求めた段階的承認申請を開始していたものの、今年1月現状の申請承認フォームでは承認できないとする審査完了報告通知を受領。FDAより同剤の投与を12ヵ月以上継続した100人以上の患者のデータの提出を求められている。またロシュ/中外製薬の「ガンテネルマブ」は早期AD対象に評価を行った「GRADUATE I 試験」および「GRADUATE II 試験」で主要評価項目を達成せず、中外製薬は2月2日に開催した決算説明会で同剤の開発中止を公表している。
 「ドナネマブ」は現在、検証的試験である第3相「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」が進行中で、従来の承認申請の基となるトップラインデータは2023年第2四半期に出る予定だ。イーライリリーはFDAと引き続き協力していく意向を示している。またロシュ/中外製薬は開発パイプラインに「semorinemab」「trontinemab」といった2つのAD治療薬を持っている。明暗分かれたAD治療薬開発状況だが、引き続き今後の展開に期待したい。
(2023年2月10日掲載)