薬事ニュース社
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>>>医療政策-新政権への期待と責任<<<
 8月末に総務省が発表した国や自治体に対する2008年度の不服申し立ての処理状況によると、自治体に審査請求された1万5990件のうち66%にあたる1万398件が、後期高齢者医療制度についての不服だった。後期高齢者医療制度は、08年4月のスタート直後から「“後期高齢者医療被保険者証”が送付されていない」「保険料額を間違う」「保険料を免除されている被保険者から徴収する」などのミスが相次ぎ、問題となった。また、「年金から保険料を天引きするのはおかしい」といった感情的とも言える批判も受けた。冒頭の数字は、国民の不満が大きいことを示していると言えよう。
 8月30日に投開票が行われた第45回衆院選では、その後期高齢者医療制度を廃止する方針の民主党が、過半数を大きく上回る308議席を獲得。政権交代へと繋がった。民主党のマニフェストは、「後期高齢者医療制度・関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する」「被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る」とし、必要な財源として8500億円程度と見積もっている。マニフェストにはこのほか①(骨太方針2006が定めた)「社会保障費2200億円削減」は行わない②医学部学生を1.5倍に増やし、医師数を先進国並みにする③新型インフルエンザ、がん、肝炎の対策に集中的に取り組む――など魅力的な項目が並ぶ。財源もそうだが、薬価制度やジェネリックの使用促進策がどうなるかも気になるところだ。
 医療崩壊が叫ばれる今、少子高齢社会の時代の患者が、安心して受診できる安定的な制度を構築できるか。新政権によるパラダイムシフトに期待が高まる一方、その責任は重い。
(2009年9月11日掲載)