薬事ニュース社
オピニオン

>>>パンクに託した思い<<<
 映画『パンク・シンドローム』はフィンランドの知的障害者4人が結成したパンクバンドのレコーディングやツアーの様子を映したドキュメンタリーだ。曲に込めている主張は施設への不満を中心に、人として当然なものばかりでシンプルだ。何でも指示をするな、もっとおしゃれな街に住みたい、少しばかりの敬意と平等がほしい、など日々の生活の中で怒りを感じたことを日記に書きとめ、曲に乗せる。
 映画の中でメンバーの1人が、足の爪のケアなどをするフットケアの予約を強制的に入れられたことに怒り、キャンセルする場面があった。理由が良かった。食事に行ったりテレビを見たりしなくてはならず忙しいという。ライブでは演奏に失敗して最初からやり直す場面もあったが、技術レベルなど問題にはならない。彼らの歌には力がある。障害を持っているかどうかにかかわらず、私の言いたいことを言ってくれているようでスカッとした。人はどのように生きるかを自分で決める権利を持っているはずだ。
 先日、認知症に関する初期集中支援システムの設置などを含む「新オレンジプラン」が発表された。認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けることができる社会の仕組みを目指すというものだ。病気の治療では患者と医師がいかにコミュニケーションを取るかによってQOLに差が出るという報告がある。厚労省の発表資料にあるように、本当に当事者の声を重視し使いやすい仕組みができるのか注目していきたい。
(2015年2月6日掲載)