薬事ニュース社
オピニオン

>>>それはお正月気分<<<
 年末年始の休暇を利用して、長年訪れたいと思っていた沖縄県の大東諸島を訪れた。沖縄本島からプロペラ機で東に1時間、周りには見渡す限り海水しかない、沖縄どころか日本でも屈指の孤立度を誇るガチの離島である。道路を埋め尽くすヒキ蛙の轢死体や、過食したら最後、尻から脂が漏れる怪魚インガンダルマなど、観光地沖縄のイメージを覆す魅力的なネタも多い。しかし個人的に最も面白かったのは、島の歴史や人々の生活だった。
 大東諸島は、八丈島の実業家が20世紀初頭に、沖縄の人々を使役して開拓した島々だ。そう聞くと一瞬、国内ではほぼ耳にすることのない“民族対立”という言葉が脳裏を過る。しかし現在ではその主従関係も解消され、人口は圧倒的に沖縄系の方が多い。過去には住民間の軋轢もあったと聞くが、今では八丈島系と沖縄系の結婚も当り前で、静かな暮らしが営まれている。
 島民に誘われて、1月2日に行われた島の成人式に潜り込んだ。余興では八丈島から伝わった伝統芸能の大東太鼓が披露されたが、見れば演者の衣装は、法被こそ内地風のものでも、帯にはしっかりとミンサーの柄がデザインされていた。参加者たちはそれを、オリオンビールと升酒をチャンポンにしながら眺めている。全く異なる文化をもつ人々が、小さな島の中で一緒に祝い事を行っている。不思議なことではないのかもしれないが、それは限られた土地の中で双方が主張したり、一歩引いたりしながら(後者が大事)、何とか築き上げてきた平和のあり方のようにも見えた。国内に、そして世界中に、このような島が幾つあるというのだろうか。
 図らずとも日本屈指の離島において、現在のグローバル社会に蔓延る国家間問題や移民問題の答えの端緒を見つけた気分になった。が、それはお正月気分。東京に帰って新聞をめくれば、紙面はやはり日韓問題・日中問題・その他諸々で埋め尽くされていた。現実はそんなに甘くないですよね。
(2014年2月14日掲載)