薬事ニュース社
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>>>進む3回目接種、広がる国家間格差<<<
 新型コロナウイルスワクチンの効果をさらに高めるために追加で打つ「ブースター接種」の実施が先進各国で始まっている。時間の経過に伴ってワクチンの効果が低下する可能性があるとされているためだ。米国とイスラエル、ドイツやフランスなどが3回目接種を開始していて、日本も年内にも接種を実施する方針だ。
 一方で、世界保健機関(WHO)は、3回目の接種を始めることに反対している。現段階では必要性について科学的根拠がないとの意見があることに加え、途上国ではまだ1回目のワクチンも受けられない人が大勢いると指摘している。確かに、G7などほとんどの先進各国では、国民の半数以上のワクチンの2回接種が完了しているが、途上国では医療従事者でさえ、まともに接種を受けられない国が多いのが現状だ。3回目の接種を計画できるのは、先進国や資金力がある国に限られている。
 このまま先進国がワクチン確保に走ると、ますます国家間の格差が広がっていくことは容易に想像できる。たとえ先進国で収束しても、途上国で感染が続く限り、「デルタ株」のような危険な変異株が出現する可能性は高い。まずはWHOが主張するように、国家間のワクチン格差を是正することを優先するべきではないだろうか。途上国へのワクチン分配に注力し、接種率を高めていくことが国際社会に求められていると思う。
(2021年9月17日掲載)