薬事ニュース社
オピニオン

>>>「タミフル」問題について<<<
 「人が死なないと動けないのか?」――。高校生ぐらいだろうか。たまたま隣に居合わせた彼は、自分のノートの背表紙に、大きくその文字を書きなぐっていた。「タミフル」検討会でのことである。
 一方、会議終了後の会見を見て。「あれ(マスコミの加熱報道ぶり)は異常だよ」――。今度は役人が吐きすてるように言っているのが聞こえた。
 「タミフル」問題を受けて、厚生労働省に対するバッシングが続いている。確かに、ノートに書かれた彼の言葉を見た瞬間、私は一瞬動きが止まった。あまりにも直球すぎて、多分忘れることは出来ないだろう。ただ、第三者の立場で考えた時、この問題を「行政の怠慢」だけで片付けてしまうことに、正直抵抗を感じたのも事実だった。他国と比べて異様に多い、日本の「タミフル」消費量。インフルエンザと確定診断せずに「タミフル」を出している医師の処方実態などが、検討会では浮き彫りになっている。確かに行政の責任はある。ただ、それだけで片付けてしまっていい問題なのか。疑問に残った。 
 結局、現段階で「タミフル」と異常行動との因果関係については何もわかっていない。ただ、今はっきりと言えるのは、国民も現場の医師も混乱したままインフルエンザシーズンが終わったということだけだ。
(2007年6月1日掲載)