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>>>留意事項通知による処方制限<<<
 日本イーライリリーは8月31日に、薬価収載する予定だった乾癬治療薬「トルツ皮下注80㎎シリンジ・オートインジェクター」(一般名:イキセキズマブ〈遺伝子組換え〉)の収載希望を取り下げた。類薬に比べて高額な薬価が付いたため、中央社会保険医療協議会で類薬を優先的に使用するよう求める意見が続出。類薬の「ルミセフ」や「コセンティクス」を使用しても効果が不十分な場合にのみ、「トルツ」を使用するといった留意事項通知を出す方針が決まり、事実上の処方制限を余儀なくされたイーライリリーは再申請という事態に追い込まれた。
 留意事項通知で製薬企業が薬価収載を見送るのは前代未聞であり、厚生労働省保険局医療課も「了承された薬剤について企業が、収載希望を取り下げるという事例は聞いたことがない」と認める。製薬企業の関係者は「企業経営の予見性を揺るがす大きな問題だ」と厚労省に批判的だ。
 対象患者や使用する医師、実施施設を絞って医薬品の適正使用を進める「最適使用推進ガイドライン(GL)」についても、GLを踏まえた内容を盛り込んだ保険適用上の留意事項通知を出すことに決まった。16年度は試行的に免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」と高脂血症治療薬「レパーサ」に適用される。ここでも厳格な処方制限が想定されるが、業界関係者の中からは「留意事項通知は、医師の処方権の裁量を侵害する可能性もある。何故、日本医師会の委員は積極的に反対しないのか」と訝しがる声も聞かれる。
(2016年10月21日掲載)