薬事ニュース社
オピニオン

>>>その"問題”病院のオーナーに提案します<<<
 国が“医療の標準化”を旗印に、03年から82の特定機能病院等で実施した急性期医療に係る診断群分類別包括評価(DPC)。今年度からその対象病院が360病院に拡充し、日本の診療報酬体系の出来高評価と包括評価の2軸化構想がいよいよ現実味を帯びてきた。しかしそうした中、DPCの負の面が表面化している。ベッドの稼働率の悪い病院のオーナーが、1日毎に診療報酬が受け取れるDPCの特徴を逆手にとり、退院可能な患者を故意に退院させず、診療報酬を逓減させてまでも、そのまま入院させているというのだ。
 病院のオーナーが経営改善の手段として、そうした行為に及んだ気持ちが理解できないわけではない。ホテルのオーナーは空室率を下げるために、室料を下げてでも宿泊者を獲得して部屋を埋めることに専念する。それがホテル経営を破綻させないためのひとつの手段であり、商売上当然の行為であるからだ。
 しかしだからといって、そうした行為が病院のオーナーに許されるわけではない。同じオーナーでも病院とホテルでは性質が全く異なる。病院収入は、そのもとを辿れば、診療報酬という名の保険料、税金、患者負担であり、市場経済で得たものではなく、国の、国民の資産である。故意に退院を先延ばそうとする行為は、国に対する、そして患者に対する二重罪にあたるといえる。
厳しい病院経営から脱却するために、居心地の良い病院ライフを患者に提供して長く滞在してもらうという選択肢もあるかもしれないが、それなら市場経済に委ねた経営方式、つまり病院の株式会社化を一考すべきではないか。ただし世間がそれを許すかどうかは分からないが……。
(2006年5月19日掲載)