薬事ニュース社
オピニオン

>>>意外と遠い<<<
 和漢医薬学会学術大会の取材で、石川県の金沢市を訪れた。実家が隣県にあることなどから、彼の地は何度となく訪れているが、今回初めて東京から向かってみて思ったのは、「意外と遠い」ということだった。理由は、北陸最大の都市でありながら近くに空港がないためで、空の玄関口の役割は、戦時中に軍用飛行場として建設された小松空港が務めているのだった。
 小松空港から金沢駅までは連絡バスで1時間程かかる。自分の住居は東京23区の極北にあるので、羽田から飛行機+連絡バスで行くと4時間程度、越後湯沢経由の上越新幹線+特急はくたかで行くと4時間半程度となる。値段や手間の割に、所要時間に大差はない。そんなわけで通常の帰省と同様、陸路での金沢入りとなった。ちなみに金沢駅から会場の金沢大学角間キャンパスまでは、路線バスで小一時間かかる。もはや周辺国に行くより遠い気がするが、これも一興と考えるべきなのか。
 そんなことを考えつつ、はくたか号に乗り込み、直江津辺りまでの風景を眺めた。あともう少しで北陸新幹線が開業すれば、その後は見る機会のなくなる風景かもしれない。時々見える小さな街や村は既に寂れた感じで、開業後はそれがさらに加速するだろう。そう思うと、少々寂しい気分になる。
 思えば学生~20代の頃は、節約と酔狂から鈍行列車を乗り継いで帰省し、乗換えで暇を持て余す度に、駅前の寂れた喫茶店に潜り込んでは、地元の人々が話す方言に耳を傾けていた。そうすることで、日本の広さを感じたかったのだと思う。時間と気力があれば、またそんな小旅行をしたい気がするし、一度訪れた店なども再訪してみたい。しかし新幹線が開通すれば、帰省にかかる時間はいきなり約2時間に短縮される。この早さと快適さには抗えない予感がする。実家は近くなるが、旅の記憶は遠ざかっていくかもしれない。
(2013年9月27日掲載)