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>>>緊急避妊薬のスイッチOTC化<<<
 厚生労働省は緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けてパブリックコメントを募集する。9月30日の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で方針を決定した。パブリックコメントの結果を踏まえ、再び評価検討会議で議論し、検討会の報告書として作成する。報告書は要指導・一般用医薬品部会で承認の可否を審議する際に活用する方針だが、スイッチOTC化の賛否は示さず、課題点や対応策などを取りまとめた報告書の位置付けに留まるため、スイッチOTC化が進展するかどうかは見通せない。
 緊急避妊薬を処方箋がなくても薬局で入手できる状況を望む声は、国民・生活者の間で強まっている。国策にも掲げられたセルフメディケーションのさらなる推進とは別に、予期せぬ性交渉によって望まない妊娠に女性が苦しむ現状がある。緊急避妊薬は性交後の72時間以内に服用しなければならないため、迅速かつ簡便に薬局で購入できる環境整備を期待する声は大きい。すでに海外では多くの国で、緊急避妊薬を処方箋がなくても薬局で購入できる。
 ただ、日本では緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けたハードルは高い。初めて審議の俎上に載せた2017年7月の評価検討会議では、悪用や濫用の懸念があるといった理由から否決された。日本は性教育が十分に浸透しておらず、使用者自身のリテラシーが十分ではないといった指摘も出た。特に医師系の委員の多くは慎重な姿勢を崩していない。21年10月に審議を再開した評価検討会議自体も、当初は夏頃を目途にパブリックコメントを募集する方針を掲げていたが議論が膠着し、9月30日の会合でようやくパブリックコメント案の了承に漕ぎ着けた。
 パブリックコメントの募集に繋げたとしても、スイッチOTC化が実現するかどうかは現状では不透明な状況だ。評価検討会議が作成する報告書には、実際に承認の可否を判断する要指導・一般用医薬品部会の審議に、どの程度の影響を及ぼすのかは現時点で見通せない。加えて、製薬企業から承認申請が上がってこなければ、報告書を活用する機会も生まれない。会合で松野英子委員(日本保険薬局協会常務理事)は「女性の人権を守るという視点に立ち、支援の一環としてOTC化を進める時期にきている」と主張した。こうした声が今後の議論にしっかりと反映されることを期待したい。
(2022年10月7日掲載)