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>>>アレルギー対策と「エピペン」<<<
 アレルギー対策の基本指針作成に向け、2月から始まった厚生労働省の「アレルギー疾患対策推進協議会」。アレルギー疾患の現状と課題に関するヒアリングを経て、4月に開かれた第4回目の会議ではこれまでの論点整理を行い、指針作成への議論が本格化してきた。会議では気管支喘息や花粉症など6疾患を対象とし、文部科学省や消費者庁の代表も参加するなど、多岐に渡る議論を展開している。その中でも、児童の食物アレルギー対策には様々な意見があげられており、とりわけ多くの委員から改善が求められているのが、アドレナリン自己注射薬「エピペン」の取扱いだ。
 食物アレルギー患者がアナフィラキシーになった場合、医師の治療を受けるまでの間、症状を緩和するために「エピペン」の使用が食物アレルギーやアナフィラキシーのガイドラインで示されている。食物アレルギーの主な患者は児童であり、学校で児童がアナフィラキシーになり自己注射ができない状況では、学校職員による投与が求められている。しかし、会議では「エピペン」使用の調査結果から、学校が保護者を呼び出して注射をさせたケースが3割近く存在するとして、学校職員が率先して「エピペン」を使用しないことによる初期対応の遅れが問題にあがった。また、自治体によっては独自にアレルギー対策の手引きを作成し、「エピペン」も含めた緊急時の対応を学校に示しているが、手引き通りの対応が徹底されていない現状が会議では指摘されている。既存のガイドラインや自治体単位での周知徹底には限界があるということか。厚労省と会議には実効性のある指針作成が求められる。
(2016年5月13日掲載)