薬事ニュース社
オピニオン

>>>薬価制度よ何処へ行く<<<
 「現行の薬価制度における大きな改革はこれで最後になるかもしれない」。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の試行導入が決まった2010年度の診療報酬改定直後、関係者は異口同音にそう漏らした。その言葉通り、新薬創出加算導入後の累次の改定では、薬価制度の見直しは、「改革」という言葉を使うのも憚られるマイナーチェンジに終始し、16年度改定でも基礎的医薬品の薬価の下支えが目立つ程度。現行薬価制度がそれだけ、成熟した状態にあることを印象付ける。
 その反面、社会保障費高騰を背景に、財源捻出を主たる目的とした薬価引き下げ圧力は強まる一方で、16年度改定でも「特例拡大再算定」という、いささか筋の通らない仕組みが強行された。「皆保険制度維持のために、薬が泣いてくれ」ということらしいが、その割には対象となったのは外資の製品ばかりで、狙い撃ちと批判されても仕方がない。関係者のなかには、「特例の対象となるような製品はそうそう出てくるものではない」と楽観視する声もあるが、厚労省を見くびるなかれ、該当製品がなければつくればよい、とばかり、いずれ「巨額」の基準引き下げに動かないと、いったい誰が断言できよう?
 さて、製薬協の多田正世会長は年初の会見で、「市場実勢価格に基づく2年毎の薬価改定というやり方を変えない限り、必ずマイナスにしかならない」「今の薬価制度を根本から変えるようなやり方、例えば自由薬価というふうな形を採らない限り、この構図から抜け出せない」などとした認識を示している。現行の薬価制度を前提とする限り、新薬創出加算のような「プラス」評価は、もはや期待できないだろうということは10年度以降の改定で立証済み。毎年改定の火種も燻る。とはいえ一足飛びに自由薬価というのもなかなか想像しづらい。今後、薬価制度はどこに向かうのか、あるいはどこへも向かえぬまま漂流を続けるのか、いまのところ行き先は見えない。
(2016年2月5日掲載)