薬事ニュース社
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>>>「かかりつけ薬剤師」についての一考察<<<
 近所の病院で、ひと月ほど前から工事が始まった。病院の敷地内、駐車場として利用されていた場所に何かを建てるらしい。掲示されている建築計画には、何が建つのか具体的な記載はないのだが、まさか病院の敷地内、正面玄関の真ん前に院長の新しい家が建つとも思えないので、思い当たるのは薬局しかない。通りを挟んだ隣の区画に、すでに古くからの門前薬局があるのだが、規制緩和に対応したものだろう。全国で同じような現象が起こってくるとすれば、厚労大臣が言ったように、確かに「病院前の景色が変わる」。中医協では目の敵にされる調剤チェーンだが、そのしたたかさに改めて舌を巻く。
 さて、その商売上手の調剤チェーンも、2016年度改定の対応にはさすがに苦慮したようだ。新設された「かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料」のことで、問題となったのは「かかりつけ薬剤師」の要件の1つである「地域活動」。この要件の判断基準が地域の厚生局によって異なったために各地で混乱が生じ、調剤チェーンからは「解釈が一律になっていない」と不満が噴出した。しかし、厚労省が発出した疑義解釈通知によって、ようやく落ち着きを取り戻したようで、ある大手調剤チェーンは「来年の3月期決算には挽回できる」と自信を示している。
 ちなみに筆者も検査等のために定期的に眼科を受診していて、5月の連休明けに改定後初めて処方せん持参でいつもの薬局に行ったのだが、予想通り、同意を求められるどころか、何の説明もなくスルーされてしまった。まあ、点眼薬だけの患者に「かかりつけ薬剤師」も何もあったものではないが、薬局への支払いは4月以前より安かった。つまり、従来通りでは薬局は収入減になるわけで、減収を避けるために、調剤チェーンが組織を挙げた取組みを強化するだろうことは容易に予想できる。
 ところで、仮に調剤チェーンが「かかりつけ薬剤師」点数で稼いだとして(あくまで正攻法で、だが)、中医協ではどう言われるのだろう。「金儲け主義」と叩かれるのか、それとも「かかりつけ薬剤師の浸透に尽力した」と賞賛されるのか。実に興味深い。
(2016年7月22日掲載)