薬事ニュース社
オピニオン

>>>がっかりするから希望も持てる<<<
 6月3日、日本精神神経学会学術総会で京都大学の松沢哲郎教授の講演「想像するちから:チンパンジーが教えてくれた人間の心」を聴いた。松沢氏は人間の心の進化について研究するため、人間をアウトグループから見ることとし、最もヒトに近い動物であるヒト科チンパンジーの研究を行ったという。
 チンパンジーの子どもに1~9の数字と順序を教えると、コンピューターの画面にランダムに並んだ数字を瞬間的に記憶し、1から順にタッチすることができた。瞬間記憶は人間よりも優れていることが示された。一方で漢字の勉強では色を見て漢字を選ぶこと、漢字を見て色を答えることもできるようになったが、数字より難しかったという。「文字から色を想像することが必要(その逆も)で、目の前にあるものから違うものを想起する力がある人間だから簡単」なのだという。
 さらに急性脊髄炎によって寝たきりになったチンパンジーについても紹介、「介護スタッフにいたずらをするなど絶望感を全く見せなかった」とのこと。
 松沢氏は「チンパンジーは"今ここ"を生きているので絶望せず、明日のことで悩まない。人間は過去や未来、遠くの人のことを想像することができ、絶望することもあるが希望を持つこともできる」と述べた。
 落ち込んだり悩んだりした時、この講演を思い出し希望に変えていこうと思う。
(2016年7月8日掲載)