薬事ニュース社
オピニオン

>>>「生活改善剤」への視線<<<
 「啓蒙活動を通して、市場を開拓したい」――最近、新製品の説明会に行くと、よく聞く言葉である。 ED 治療薬にしろ、禁煙補助剤にしろ、数年前には「薬で治す」といった概念がなかった分野である「生活改善剤」の市場に、製薬会社からの熱い視線が注がれている。
 「生活改善剤」の潜在市場は大きい。例えば、 ED 患者は 1130 万人、喫煙者においては 3108 万人にも及ぶと言われる。この巨大なマーケットを獲得しようと、各製薬メーカーは躍起になって商品化を進め、プロモーション活動を行っている。しかし、1人の一般消費者としてこの状況を見てみると、いささか違和感を覚えてしまう。
 確かに、薬の登場により、生活の質が向上し、本人の満足度に繋がっていることは紛れもない事実。また、だからこそ、こうした薬剤の売り上げは伸びているのだろう。しかし、その一方で、今までに無かった「疾患」を作り出しているという見方もあるかもしれない。「医者も病気だと認識していない人が多い。潜在患者の掘り起こしが最大の課題」。あるメーカー関係者が、新製品説明会の場で述べた言葉である。
 とはいっても、今や生活者のニーズは多様化している。同じ疾患でも生活様式が変わればニーズは変わる。その中で、患者は自己決定権によって医薬品を、治療法を選び取っていく。とくに慢性疾患患者は、日々の生活の中で疾病と医薬品と付き合っていかなければならない。その流れからいえば、こうした「生活改善剤」の登場は当然のことなのかもしれない。

(2004年5月21日掲載)