薬事ニュース社
オピニオン

>>>勇気ある決断に期待<<<
 田村憲久・厚生労働大臣は8月31日の閣議後会見で、厚労省が2013年6月から積極的勧奨を差し控えたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて、積極的勧奨に向けた議論を再開する方針を示した。これを受けてHPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は9月3日、抗議の声を挙げた。
 HPVワクチンを巡っては、2013年4月から定期接種となっていたものの、接種後に多様な症状が現れたと訴える報告が相次ぎ、自治体による積極的勧奨が差し控えられたという経緯がある。当時、メディアでも大きく取り上げられたことは記憶に新しい。しかしこうした多様な症状の原因がHPVワクチンであるという科学的な証拠は示されておらず、厚労省の専門部会において因果関係は否定されている。
 現在、国内の子宮頸がんの罹患数は年間約1万人、死亡は約3000人。患者数・死亡数ともに近年増加傾向にある上、若い世代での罹患が問題となっている。原告者による「副作用被害のためにあきらめた夢がある」「同じ苦しみを味わってほしくない」「積極的勧奨を絶対してはならない」という訴えは、一人の人間として強く心が揺さぶられ、しっかり耳を傾けなければいけないと思う。一方で、ワクチン接種の積極的勧奨については、感情論でなく科学的根拠を元に議論を進めなければならない。2013年当時、接種勧奨を撤回した田村大臣の勇気ある決断に期待したい。
(2021年9月10日掲載)