薬事ニュース社
オピニオン

>>>いろいろもどかしい<<<
 アルジェリア人質事件にグアム通り魔事件と、海外で邦人が理不尽に殺害される事件が続いた。どちらも痛ましい事件だが、個人的にはその背景や具体的動機が見えてこなかったという点で、後者の方が強く印象に残った。
 犯人は容姿やスペイン系の名字から、島民の4分の1を占めるフィリピン系ではと想った。しかし米国のメディアからは犯人の民族的背景について特定したような報道はないし、そもそも人口の4割を占める先住のチャモロ人にもスペイン系の名字は多い。つまり人種や民族から犯人について考える手がかりは少ない。あまりその点にばかり拘るのも良くないのかもしれないが、しかし日本人だけが被害に遭った事件において、その情報が抜け落ちているのも妙な話だ。こちらは事件について考える取っかかりを持てず、もどかしい。
 メディアは犯人の薬物使用歴や家庭の事情等にフォーカスした情報ばかりを流していたが、どれも噂の域を出ないようだ。「マリファナに手を染めた疑いも」などと記述した報道まで見かけたが、吸引にせよ売買にせよ、それが今回の凶悪事件とどう関係があるのだろうか。結局はいつまでも、第一報から変わらず「平和な観光地でなぜ」というモヤモヤ感だけが寄越されるばかりでもどかしい。
 意外な土地での惨事だったせいか、大手メディアまでが「常夏の楽園」といった、観光客目線の表現を用いていたことにもモヤモヤさせられた。実際のグアムはプエルトリコや沖縄などと同様、観光と米軍基地に強く依存した現代社会で、島民にとっては南洋幻想的な楽園のイメージなど迷惑な話かもしれない。以前、ミクロネシアの朴訥とした島国を巡る旅の最後にこの島を訪れたら、人々のメンタリティーが余りにも他とは違っていて驚いた記憶がある。個人的にはその辺りに、今回の事件のキモがありそうな気がするのだが。
(2013年3月8日掲載)