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>>>変化への期待<<<
 日本医薬品卸売業連合会は5月25日に開いた定時総会で、宮田浩美会長をはじめとする新執行部体制を公表した。合計4期8年にわたって会長職を務めた鈴木賢・前会長からのバトンタッチになった。選任挨拶の中で宮田新会長は「勇気」という言葉を用いたのが印象的だった。記者会見でその意味について尋ねたところ、「医療機関・薬局の理解を得ながら、不採算の製品を販売することはできない、ということを説明していくことが大切ではないか」と語った。これまでの商習慣で、赤字になることがわかっていながら、販売している製品は存在しており、それが当たり前になっていることからの脱却に向け、業界全体で方向性を示すことの必要性を呼びかけた。また、卸売業にとって医薬品の供給問題と同様に喫緊の課題となっているのが、若手社員の離職率の高さだ。ヘルスケア産業プラットフォームが2022年に公表した資料によると、医薬品供給不安と製品調整、毎年薬価改定による板挟みなどが要因で、勤務する従業員数はコロナ禍で著しい減少傾向にあることがわかった。宮田新会長はこうした動向にも懸念を示した。「コロナ禍で直接人と接することができないうえ、毎年改定の影響により倍速で薬価が下がっていくような経営環境にあった」と話し、若者が業界の将来に不安を覚えることに理解を示した。一方で、自身もスズケンで20年以上にわたって汗を流してきた現場経験を振り返りながら、鈴木前会長が提唱した医薬流通産業としての業態確立に認識を寄せる。「東日本大震災の際には、自身も被災しながら、職務を全うしている姿に涙がでた。卸の持つ社会的使命感の重要さを改めて発信していくことが大切だと思う」。ややもすると、医療提供体制の中では縁の下の力持ち的な存在に見られがちな卸売業の機能と役割の評価獲得に向け、宮田新会長への期待は大きい。
(2023年6月16日掲載)