薬事ニュース社
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>>>後発品産業の将来像<<<
 供給不安が続く後発品のあり方の見直しに厚労省が乗り出した。「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が先ごろ取りまとめた報告書では、後発品の産業構造を見直す必要性を訴え、「今後の後発品産業のあるべき姿を策定するとともに、その実現に向けた方策を具体化するための会議体を新設し、速やかに検討に着手すべき」と提言。具体的には、新規品目の上市にあたり、十分な製造能力を確保しているか、継続的な供給計画を備えているといった安定供給を担保するための一定の要件を求め、これらの要件を満たさない企業に対しては、市場への参入ができなくなる仕組みの導入を検討するよう促した。また、少量多品目の産業構造を解消するため、業界再編も視野に入れながら、品目数の適正化や適正規模への生産能力の強化も必要と提起し、薬価のあり方に加え、品目数の適正化に併せた製造ラインの増設などへの支援、税制上の優遇措置を検討するなど、ロードマップを策定して集中的な取組を行うべきと提案した。
 後発品のあり方をめぐっては、経済財政諮問会議も「国民負担の軽減とイノベーションの推進を両立する」観点から言及。「特許が切れた長期収載品に依存するのではなく、新薬創出によって収益を上げ、その資金が新薬開発の再投資に充てられる構造への転換が必要」と指摘し、長期収載品から後発品への置き換えを進めることで財源を捻出、その分を新薬の薬価算定の改善や、特許期間中のさらなる薬価特例などに充てるという好循環を推し進めるためにも後発品産業が重要との考え方をにじませている。
 一方で、厚労省の有識者検討会の報告書では、薬価制度については、製造能力や生産計画、生産実績など安定供給に関する企業情報の可視化を行い、こうした情報を踏まえた新規収載時や薬価改定時の薬価のあり方を検討すべきなどと記載している。医薬品産業政策の根幹は薬価制度にある。供給不安を払拭し、安定した後発品市場、後発品産業を育成するためには、薬価制度面からの環境整備の視点も欠かすことができない。
(2023年6月23日掲載)