薬事ニュース社
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>>>母子加算廃止に募る疑問<<<
 07年度予算編成の基本方針を示す「建議」が11月21日にもまとまる。それを合図に、本格的な予算編成作業がスタートする07年度予算は、2011年度基礎的財政収支の黒字化達成に向けた歳出・歳入一体改革の最初の年というシンボリックな側面もあって、前年度より歳出削減が色濃い内容になりそうだ。社会保障費も年末までに2200億円の財政抑制が命題となっている。
 現在、その抑制方策の1つとして有力視されているのが、生活保護費の母子加算の廃止だ。その理由について厚労省は、「一般の母子家庭と生活保護を受けている母子家庭の生活水準を比べると、生活保護を受けている母子家庭のほうが高いから」と説明する。一般の母子家庭からすれば、生活保護を受けている母子家庭の方が、生活水準が高いとなれば、高くしている母子加算の廃止に納得がいくだろう。しかし野党議員は国会で、「一般の母子家庭が生活保護水準以下であることのほうが問題」と反論する。一般家庭との「平等」を盾に、母子加算を廃止して低いほうの水準に合わせる同省の発想を批判したわけだが、この言葉は胸に落ちた。
 最近の国・行政は、財政再建と称し、度重なる保険給付の引き下げを行い、国民・患者への締め付けが厳しさを増している。主要先進国中最悪の水準にある日本の財政事情を考えれば、年1兆円ずつ増える社会保障費の歳出削減に力点を置かざるを得ないのは理解できる。が、社会保障費でも、生活保護費のような憲法が定める「最低生活の保障」の領域にまで手を出す必要があるのか。「歳出のムダを削る」ことをモットーに財政再建を謳う国・行政。だが、ムダの有無を問う議論の前に、歳出削減ありきで動いている節がうかがえる最近の対応を憂う声もある。
(2006年11月10日掲載)