薬事ニュース社
オピニオン

>>>緊急承認見送り“非常に残念”<<<
 感染症というのは、病原体に完全に出ていってもらわないといけない。そうしないとすぐに繰り返してしまうし、周りの人にもうつすことになる――。とあるメディアセミナーで、大学教授が話していた言葉だ。細菌やウイルスが、体内から完全にいなくなる状態にすることが、感染症治療におけるゴールになると。当たり前といえば、当たり前の話だ。新型コロナウイルスも然りである。
 ところが、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会では違ったらしい。7月20日に開かれた薬事分科会と医薬品第二部会の合同会議において、新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」の緊急承認が見送られたのだ。臨床試験において、投与後速やかにウイルス力価(ウイルス量)を低下させ、既存薬と比較して非常に強い抗ウイルス効果を有することが示されたにも関わらず、である。見送られた理由は、倦怠感や発熱、咳、のどの痛みなど、新型コロナウイルスに特徴的な12症状の総合的な改善効果が成功基準を満たさなかったため「有効性を推定できない」との意見が大勢を占めたことによる。
 新型コロナウイルスの第7波が到来し、夏休みを直撃する。過去最大規模だった第6波を超えるとも予測されている。速やかにウイルスを減少させる薬は、ウイルスにいなくなってもらうのに有用である。コロナ対策にも重要な意義があったのではないかと思えてならない。継続審議されるとはいえ、緊急承認が見送られたことは非常に残念だと思っている。
(2022年7月29日掲載)