薬事ニュース社
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>>>コロナ下の中間年改定<<<
 昨年末に発覚した、小林化工の経口抗真菌剤「イトラコナゾール」への睡眠剤成分混入問題が製薬業界を揺るがしている。服用患者の死亡にまで発展した今回のケースは、不適切な製造管理体制が原因となったことが明らかになっており、厚労省も「製造業者における基本的な製造管理のミスやチェック体制の不備から生じたものであり、我が国の医薬品の品質と安全性に対する信頼を揺るがせる事態」と指摘、後発品だけではなく、医薬品全体の信頼性にかかわる重大事との危機感を表明している。
 後発品をめぐっては、国を挙げた使用促進が強力に推し進められる一方で、自主回収事案が相次いでおり、問題視されていた。今回の事案は、その矢先に発生した。混入事案そのものは、強く非難されて然るべきだが、関係者からは、「政府による使用促進策が関係者にとって魅力的に映り、多くの製薬企業が後発品の製造供給に参入した。結果的に価格競争の激化などを生み出し、製薬企業は量的な拡大を迫られる。こうした動きが最終的に欠品問題などに繋がっているとも感じる」とした声のほか、相次ぐ薬価引下げにより経営体力が低下し、「質の低下を招きかねないような製造管理を余儀なくされている」可能性を示唆する意見も聞かれる。
 ここ数年来、医療費抑制を薬価にのみ頼った場当たり的な薬価引下げが特に顕著だ。 今回の中間年改定も然り。菅総理は、先に開会した通常国会の施政方針演説で、「医薬品の7割の品目を薬価引き下げの対象とし、医療費で4300億円、国費で1000億円、国民が負担の軽減を実感できるようにした」と胸を張った。それはその通りである。しかし反面、製薬業界団体は「『国民負担の軽減』と『医療の質の向上』を両立する観点から、著しくバランスを欠く決定と認識せざるを得ない」と、いつになく強い調子の声明を発表している。後発品だけではなく、製薬大手も経営環境は悪化している。新型コロナウイルスの感染収束が見通せないなか、行き過ぎた薬価引下げにより製薬産業を疲弊させることは、日本の医療、ひいては国のリスク管理の観点からも、決してプラスにはなるまい。
(2021年2月12日掲載)