薬事ニュース社
オピニオン

>>>価格戦争とサービスの質をめぐる短い考察<<<
 大阪ではいま、タクシー戦争が激化しているという。全国に先駆けて導入された、料金自由化の規制緩和が導火線となって勃発した「価格戦争」だ。底なしの安売り競争のあおりで、運転手の賃金低下や労働環境の悪化は深刻な状態にあるらしい。過日、深夜の大阪でその状況を目の当たりにした。人影のまばらな繁華街近くの通りに延々と連なるタクシーの列。なかには歩行者を遮るように歩道付近まで乗り上げ、「安くしとくよ」と客引きをする運転手まで現れる始末。
 こうした過当競争は、肝腎のサービスの質低下まで招いているようだ。別の日、宿泊先のホテルまで帰ろうと、「淀屋橋のMホテルまで」と行き先を告げると、運転手から返ってきたのは「淀屋橋のMホテル?高麗橋のMホテルなら知っているけど」という返事。帰京後に調べたところ、確かにホテルの名称は「Mホテル淀屋橋」だが、住所は「高麗橋」だった。しかし、である。客が「レバニラ炒め」といえば、メニューに「ニラレバ炒め」と記載していようとも、「レバニラ炒めですね」と復唱するのがサービス業の基本の「キ」。結局、まるで別のホテルを経由した挙句にようやく目的地に到着、質の低下は隠しようもなく唖然とさせられた。
 さて、医薬品小売業でも「乱売・廉売」が言われて久しい。価格競争自体は否定されるものではないが、行き過ぎた過当競争と、その結果としてのコスト削減の影響が、店頭でのサービスの質低下に繋がっていないか、薬事法改正を目前に控え、医薬品小売業はいま一度、自省する必要があるだろう。
(2006年2月24日掲載)