薬事ニュース社
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>>>先発医薬品の自己負担引き上げへ<<<
 厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会では、後発医薬品への置き換えをさらに進めるため、後発品のある先発医薬品について、患者の負担額を引き上げる方針が示されている。現在の患者の負担額は薬の価格の1割から3割だが、先発品を選んだ場合はそれに加えて、後発品との差額の一部を自己負担とする方向だ。 
 薬剤費の抑制に加えて、長期収載品から後発品への置き換えを進めることで、長期収載品に依存しない研究開発型ビジネスモデルへと転換を促す狙いもある。日本製薬工業協会が主張する「メリハリ」のある薬価制度の導入にも密接なつながりを持つ議論であり、年末までに具体策をまとめる方針だ。 
 後発品の置換率は数量ベースで80%となるなど浸透が進んできているが、金額ベースでは5割程度にとどまっている。薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により、薬剤費の総額自体は拡大傾向にある。国民皆保険の持続可能性に加え、創薬力強化の両立を目指すならば、後発品の使用促進が鍵となる。一方で医薬品の供給不安が続く中で、生産体制にも配慮する必要もある。また後発品への置き換えが進まない品目の中には、「医療上の必要性」が理由であるケースもあるし、患者の負担増によって、経済力がない人が医療にアクセスできなくならないような仕組みも同時に構築しなければならない。薬剤費の自己負担は国民一人一人に関わる問題であり、注視していきたい。
(2023年12月1日掲載)