薬事ニュース社
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>>>先進国ホワイトカラーの命運やいかに<<<
 先月発足した菅改造内閣では引き続き雇用対策を重視する方針のようだが、現在の日本の労働市場には未だ注目されるに至らないもののグローバルな問題が潜行しつつある。それは、かつて経費削減を第一義としたアウトソーシングを低賃金で済む第三世界に――という流れに関して、そのコンセプトが単純労働から知的労働へ拡大、各国ごとに設定(保護)されていた賃金の枠組みも、よりグローバルな視点で再算定されるようになってきた点である。
 ここ数年で脚光を浴びてきたインドの例。「医療ツーリズム」の訪問地として欧米・中東諸国から注目を集めてきている。利点は、①英語が通用する②医療費が格段に安い③高度な医療技術を修得――など。こうしてインドはIT産業に加えて、低い賃金と高い潜在能力を武器に医療分野でも世界を牽引する大国となるべく国を挙げて邁進している。その他にも米国では会計士をフィリピンから、英国では歯科医をポーランドから……など、人件費の低い国々からハイレベルな頭脳のマンパワーが供給される例が見られるのが現状だ。
 そういった中で、いつしか先進国の〝グローバルに見て人件費の高い〟知的労働者が存在意義を問われるようになるのは当然の流れなのか。かつて途上国の労働者に次々と職場を奪われた経験を持つ欧米市場。そして日本においても様々な形で多数の労働者が入国して来る昨今、次々と頭脳労働市場へもその波が押し寄せて来る。個性や感性を問われないマニュアル・ワーカーは真っ先にその波に洗われるであろう。技術も知識も申し分ない、しかも報酬は日本人より少なくても十分という新興国出身労働者へ仕事は流れていくであろうが、それは自然の摂理と言うべきか。
(2010年10月8日掲載)