薬事ニュース社
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>>>「今夜、すべてのバーで」<<<
 厚労省が昨秋立ち上げた「飲酒ガイドライン作成検討会」は、「アルコール健康障害対策基本法」に基づき策定された「アルコール健康障害対策推進基本計画」の「第2期計画」(21年度~25年度)の一環で、昨年末までの3回の議論を経て、1月中にGL案についての意見交換を実施、3月の会合でGL案を取りまとめる予定だ。
 検討会では、「GL」の記載項目・内容等に関する主な論点として、▽GLの趣旨(対象)について▽飲酒による人体への影響▽飲酒量▽避けるべき飲酒行動等▽飲酒に当たっての留意点、などが挙げられている。委員からは、「毎日の量の目安、1週間だと合計でここまで、たくさん飲む日を合わせてもここまで、といったようなメッセージも含まれるとよいのではないか」「お酒と一緒に食事をすることについて、食事をしない場合にどういうリスクがあるのかということを含めていけると、より飲酒リスクの回避につながるのではないか」「不安や不眠の改善の目的で飲酒をしている例も多い。こういった不適切な目的での飲酒が依存症や自殺等の重大な結果につながることがあるので、『こういうときは飲まないほうがよい』といったメッセージがあったほうがよいのではないか」など、飲酒量の指標や飲み方指南にまで踏み込んだ意見が出されており、こうした点がGLにどこまで反映されるのか興味深い。
 もっとも、酒飲みにとっては、年末年始の飲み過ぎへの戒めのようで耳の痛い話ではある。検討会では「日本では酒は百薬の長とも昔から言われているので、飲酒のよい点や『飲むときには楽しく飲みましょう』といったメッセージも記載するとよいのではないか」と、左党には心強い声もあったようだが、最近の研究では「アルコールゼロがもっとも健康リスクが低い」との見解もあり、「百薬の長」説は風前の灯火の感もなくはない。
 ともあれ、GLが「絵に描いた餅」ではアルコールによる健康被害防止も覚束ない。ただ、「飲み過ぎ注意」と分かってはいても、言うは易しでなかなか一筋縄ではいかない。そこで一計。「読めばお酒を控えたくなる推薦図書」として、中島らものあの伝説的名作を巻末あたりで紹介することをお勧めする。
(2023年1月10日掲載)