薬事ニュース社
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>>>先が見えない小児・産科医不足<<<
 帝王切開中に患者が死亡し、さらにそれを警察に届け出なかったとして福島県立大野病院の産婦人科医が逮捕・起訴された事件で、関係者に波紋が広がっている。学会は「治療の難度が最も高い事例であり、高次医療施設においても対応が極めて困難」との声明を発表。さらには逮捕された医師を支援するグループもできており、既に800人もの医師が参加している状況だ。
 その一方で、人手不足で悩む小児科・産科に、ますます拍車がかかっている実態も明らかになっている。臨床研修制度を終え、4月から大学で産婦人科を選ぶ医師は、研修制度必修化前と比べ4割も減ることが、このほど学会の調査で分かった。勤務条件の悪さや出産トラブルによる訴訟が多い産婦人科。若手医師の敬遠材料になっているという。
 「そんなにイライラして診るくらいなら、診てもらわなくていいです」――。小児科医を目指し、研修中だった女性医師はある母親からこう言われた。大学病院で研修していた彼女。あまりにも多忙で、それが診療に出てしまったという。
 国は、今国会に医師確保対策を盛り込んだ医療法等の改正案を提出した。小児科・産科における医療資源の集約化・重点化等を通して、深刻化する医師不足に対応していくという。
 小児科医を目指し、研修中だった先の女性医師。彼女は現在、内科医として病院に勤務している。深刻化する小児・産科医不足――。先はまだ見えてこない。
(2006年4月14日掲載)