薬事ニュース社
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>>>人口減少社会とノーマライゼーション<<<
 東京大学医療政策人材養成講座4期生が行った調査によると、がん患者で現在働いている人の4人に3人は「今の仕事を続けたい」と希望しており、未就労者の8割以上が就労を希望しているという。
 病にかかった時、やるべきことの第一は治療であり、我々は仕事を休み療養することが大事で、完治してから仕事に復帰するべきと考えがちだ。しかし、疾患によっては治療しながら、仕事を続けている人は多い。医療の進歩によって、そのような疾患は増えているのではないか。調査からは、がんもそのような疾患になってきたことが覗える。
 ただ、がん患者が、仕事を継続したり、就職するには、健康な人と全く同じ条件というわけにはいかない。治療のための休暇は必要だし、体調に合わせた労働内容も求められる。
 かつてのような右肩上がりの経済成長が見込めない現在、コストとしての人件費を考えた場合、制約の多い患者を雇用することは、マイナス要因となる。しかし、働く場がなく国からの生活支援を受けている患者が、自立して生活できるようになれば、社会保障の効率化に繋がるし、購買力が拡大すれば内需にも貢献する。
 また、患者を病院に押し込めておくのは、人間としての尊厳を失わせることにもなる。ある難病患者の場合、日本では病院のベッドで生涯を過ごすのに対して、デンマークでは自宅で生活し、仕事、結婚が可能であるという。
 同じ社会の構成員として、彼らの力を活用しないのはもったいないのではないか。人口減少、労働人口減少が問題ならなおさらだと思う。
(2008年8月1日掲載)