薬事ニュース社
オピニオン

>>>苦沙弥先生の胃弱は治せた?<<<
『吾輩は猫である』の中で、「吾輩」の飼い主である苦沙弥先生が、食後に消化剤の「タカヂアスターゼ」を渡され、「それはきかないから飲まん」と言う場面がある。先生はこのほか、胃弱に効くと言われたものを立て続けに食べてみたり、朝食を抜くと良いと聞いて試してみたりするものの、一向に良くならない様子が日記に書いてあった。
 9月2日、札幌地裁である判決が下った。無免許運転中に持病のてんかんを発症して人身事故を起こし、自動車運転死傷処罰法違反の罪に問われた27歳の無職の若者は、懲役1年10カ月の実刑判決となった。5月に同法が施行されて、初の判決となる。もちろん、無免許運転は許されることではない。だが、厳しく罪に問うことが本当の解決につながるだろうか。
 てんかんには様々なタイプがあり、それぞれに効く薬も違うそうだ。しかし、医師の間でもそれが浸透していないために、適切な治療を受けられていない患者が30万人はいると推測されているという。もし、適切な薬を処方されていたら、免許を取ることも就職をすることもできただろうし、事故を起こして実刑判決を下されることもなかったかもしれない。
 苦沙弥先生の話に戻ると、胃弱にもいろいろなタイプがあったのかもしれない。先生の胃弱は本当に救えなかったのだろうか。
(2014年9月19日掲載)