薬事ニュース社
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>>>価値と価格―1つの論点―<<<
 医薬産業政策研究所(政策研)が医薬品の価値の評価方法についてまとめた報告書では、類似治療との比較や医療経済学的な評価など新たな評価方法を提示している。画期性の評価の妥当性や医療経済的評価の客観性など課題は多く、報告書では具体的な算定方法の要望までは示していない。現在、薬価算定に頭を悩ませている医薬品の一つに内痔核治療剤「ジオン注」がある。
 「ジオン注」は、三菱ウェルファーマとバイオベンチャーのレキオファーマ(本社=沖縄県)が共同開発、治験での有効率は 90 %以上で、手術することなく内痔核を根治させることが可能だ。現在、薬価については交渉中だが、類似薬効比較方式で算定される見通しだ。現行制度上やむを得ないとは言え、それがジレンマを生んでいる。薬価が安ければ医療経済上のメリットとなるが、年間 12 万件行われている手術との収入上の差が大きくなる。肛門科専門医の医業経営が成り立たなくなるため、同剤の普及が進まなくなるというのだ。
 薬価制度改革について製薬協の青木初夫会長は、「価値を反映した価格設定」の実現が課題と言う。革新的な新規物質ではないが、医療経済上大きなメリットを持った医薬品をどう評価するのか。「ジオン注」が医療経済という一つの論点を浮かび上がらせた。

(2004年8月27日掲載)