薬事ニュース社
オピニオン

>>>お隣さん<<<
 尖閣諸島問題や、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞に関する騒動、さらには広州アジア大会での珍判定に至るまで、ここ最近は経済成長著しい中国の「大国」ぶりが目立つニュースが続いた。一連の報道で特に印象深かったのは、中国政府がとったレアアースの禁輸措置だ。真偽には諸説あるものの、「敵に塩を送る」といった美談を今でも大事に語り継いでいる日本国民にとっては、結構インパクトがあった話だと思う。しかし多分世界は、日本人が思っている以上に野生の論理で成り立っているはず。グローバル化した経済の中では軍事力だけが武器ではないということを、分かりやすく痛感させられた例だった。
 「やっぱり中国は付き合いにくい国だ」と考えた人も多いだろう。実際に尖閣諸島問題をめぐる各国の報道では、日本側に理解を示した記事もかなり目についた。とはいえ世界第2位の経済大国になりつつあるこの隣人とどう付き合うのかが、今後の日本の最重要問題の1つであることは確かだ。そのためには、まずは相手を知るべきであり、善意をもってすれば万事丸く収まるという幻想は捨てるべき──といった意見も方々で叫ばれている。 とはいえ諸々の報道を見ながら、なぜか想像してしまうのは、中国政府の姿勢とは全くの別次元で展開されているかもしれない、市井の人々の生活についてだったりする。当たり前のことだが、どんな国にも善意の人と悪意の人がいる。ついついそんな発想に至ってしまうのは、結局のところ、お人よしな日本人ならではの逃げなのかもしれない。しかしいずれにせよ何らかの形で、複眼的な視点を持つようにはしなければ、とも思う。
(2010年12月3日掲載)