薬事ニュース社
オピニオン

>>>イッツ・オールド・営業<<<
 とある企業の営業部。配属されたばかりの男性新入社員が他の営業部員の前で挨拶をしていると、タレントの照英扮する、いかにも体育会系っぽい先輩営業マンが、よろしくとばかり歩み出てくる。ところが、ふと足元に目を留めると、いきなりしゃがみ込んで新人の脚を掴み、「何だ、この細い脚は」と驚いて見せる。予想外の行動に戸惑う新人を尻目に、照英率いる3人の先輩営業部員が「営業で鍛えたおれたちのヒラメ筋を見ろ」と鼻息も荒く自慢のふくらはぎを披露。そして、「営業は足が命。足で稼ぐのが営業だ」の決め台詞とともに画面が静止し、「イッツ・オールド・営業」のテロップが流れる。
 これは東京メトロなどの車内モニターで、昨年くらいから放映されていたオンライン営業システムの交通広告で、ご存じの方も多いはず。広告自体は何度見ても笑ってしまうのだが、どちらかといえば「イッツ・オールド・営業」世代に属するせいか、「オンライン営業」という仕組みそのものにはいささか懐疑的だった。
 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、何もかもが劇的に変わった。
 緊急事態宣言により、多くの企業が社員の出社を原則禁止し、テレワークの実施に踏み切った。製薬企業もほとんどが「原則在宅勤務」となり、MRも医療機関への訪問を自粛、緊急事態宣言解除後も、完全に「元の世界」に戻ることは考えにくい。そもそも近年は、ICTの発達などもあり、MR活動のあり方が問われる場面が多くなっていたのも事実。「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するGL」が、そうした傾向に拍車をかけた、との見方もある。薬剤費高騰の一因に挙げる意見すらあった。
 そこへ「コロナショック」がやってきた。社会全体が変革を迫られるなか、MRだけが「元のまま」では、それこそ「イッツ・オールド・営業」と揶揄される存在になりかねない。予期せぬ事態ではあったが、これを、新しいMR像を描く好機と捉えることもできよう。
(2020年6月19日掲載)