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>>>HPVワクチンと積極的勧奨<<<
 HPVワクチンの「積極的勧奨」を巡る政府・与党内の調整が活発化してきた。自由民主党の議員連盟「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」は8月26日に総会を開き、今年10月より前に「積極的勧奨」の再開を求める要望書を取りまとめ、加藤勝信官房長官や田村憲久厚生労働大臣に提出するなどして政府内に強く働きかけていく方針を決定した。
 製薬企業側も政治への働きかけを強めている。米国研究製薬工業協会のワクチン委員会は同日の総会で「積極的勧奨の再開が10月より遅れれば、4価ワクチンが使用期限切れで廃棄せざるを得なくなる」などとして10月からの「積極的勧奨」の再開を訴えた。世界的には9価ワクチンの接種が主流になりつつあるなか、HPVワクチンの接種率が進まない日本では、4価ワクチンは他国に譲渡することもできず、在庫となって廃棄を余儀なくされてしまうためだ。
 新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の重要性の高まりも、「積極的勧奨」の再開に向けた機運を後押ししている。日本人はワクチン接種による副反応などへの警戒感が強いとされ、特にHPVワクチンは13年に「積極的勧奨」の差し控えが決まってから、接種率は数%台と低調に推移したままだ。新型コロナウイルス感染症禍で「ワクチン後進国」としての日本の現状が露呈されたと指摘する声は少なくない。
 「積極的勧奨」の再開に厚労省は従来から慎重だった。長年にわたってHPVワクチン接種の重要性を訴えてきた厚生労働省の三原じゅん子副大臣は同日の総会に出席し、「(積極的勧奨に向けて)8月末までにはしっかりと道筋を付けないといけない。重要な局面を迎えている」と発言したが、同様に参加した健康局健康課の担当官は明言しなかった。議員連盟は8月30日にも田村憲久厚生労働大臣に提出する予定だが、「積極的勧奨」の再開に向けては未だ不透明な情勢にある。
(2021年9月3日掲載)