薬事ニュース社
オピニオン

>>>五輪誘致に浮かれるのもいいけれど<<<
 競技場外での話題が先行しがちだった北京オリンピックも、終わってみれば様々に印象的なシーンを残してくれた。個人的には、今大会を最後に正式種目から姿を消すソフトボールの中継で、「ぼやき」と絶叫の相半ばした迷解説ぶりを披露してくれた前代表監督女史にMVPを贈りたい気分だが、一方で、世間は景気停滞、株価低迷、企業もマイナス成長と、呑気にオリンピック観戦どころではないという方も多かったかも知れない。
 さて、そんなお忙しいご仁でも、オリンピックをもう一度東京に誘致しようという動きのあることはご存知だろうが、それよりもはるか以前、アスリートならぬ製薬産業の「競技場」を日本に誘致しようという提唱がされたのを覚えておいでだろうか。永山治前々製薬協会長が打ち出した「日本を創薬の国際競技場に」というスローガンは、青木初夫前会長時代に「イノベーションの評価」という形で、その精神の一部が引き継がれ、現在の政府挙げてのイノベーション促進戦略、さらには薬価制度改革議論へと結び付いた。
 が、現実に目を向ければ、外資系企業は創薬拠点を次々に日本から引き揚げ、いまやアジアにおける「創薬の国際競技場」の地位は、中国はおろかインドにも遅れを取る始末。「イノベーション、イノベーションと口で言うのは、いかにイノベーションが評価されていないかの証拠」と掛け声ばかりの政府を揶揄する声もちらほら。オリンピックもいいけれど、誘致すべきはほかにもあるでしょう、と言ってみたところで、解散・総選挙モードに突入した永田町には届きそうにもない。
(2008年8月29日掲載)