薬事ニュース社
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>>>増税再延期で加速する薬剤費議論<<<
 「医療保険の本質論に迫る課題がこれほど早く出てきてしまった。率直に言えば大変な話だ」――。6月9日に開かれた日本製薬団体連合会・保険薬価研究委員会の総会後の情報交換会で、日薬連の木村政之理事長はこのように挨拶した。抗がん剤「オプジーボ」に代表される、いわゆる「高額薬剤」問題を「『特例拡大再算定』を巡る延長の話」として、「新しい局面に入った」との見解を示す。
 消費税率引き上げの再延期に伴い、年末の予算編成に向けた社会保障財源を巡る激しい攻防が想定されるなか、製薬業界内では、薬剤費抑制に対する警戒感が漂う。16年度から18年度までの3年間で社会保障費の伸びを1.5兆円程度に抑えるとした政府方針を踏まえて、木村理事長は「今年は研究開発税制に集中できると思っているが、恐らくそれだけでなく、年末になれば5000億円をどのように出すかという話が、社会保障予算の中で出てくる。何が飛び出してくるか分からない」と危機感を示した。
 16年度予算編成では、社会保障費の自然増分の伸びを5000億円に留めるため、差額分1700億円のほぼ全てを薬価引き下げで賄った経緯がある。来年度予算編成の議論を前に早くも、日本医師会は「高額薬剤」の薬価引き下げなどの薬剤費抑制を迫っており、厚生労働省の幹部は「薬剤費抑制を巡る議論は、参議院選挙後に加速していくのではないか」とみている。
(2016年6月17日掲載)